遊び半分でやってると、仕事はおもしろい

情報紙を作っている。A4用紙1枚分。
顧客とのつながりを作り、固定客になってもらう。その人数を増やすのが最終目的。
もともとそんな仕事はなかったが、自分で勝手に始めることにした。
おもしろそうだから。遊び半分だ。
失敗しても元々ゼロだったのだから痛手はない。プラスが発生したら御の字だ、といった感覚で始めた。

初月は、とりあえず作ってみて、配った。顧客の笑顔が増えた気がした。
すると、どれだけ反応があるのかが気になった。

そこで次月は、反応率を計測できる情報紙にした。
反応は、概ね1%前後だった。それは想定内だった。
ただ、その反応一つ一つが、よかった。

「読んでます。知らなかったことが書いてあって、勉強になります。」
「読んでます。とても興味深くて、次も楽しみです。」
「読んでます。商品のことからいろんなことに派生していて、なるほどと思ってます。」
などなど。
 
反応ひとつひとつを感じるたびに、気分が高揚する。
良い顧客と仕事をすると、とても幸せを感じる。

日々仕事をしていると、顧客に東南アジア系の人と、ブラジル系の人が多いことに気づいた。
彼らにもっと親しんでもらうには、どうすればいいか。
少なくとも、日本語のままではだめだ。

そこで、まず自己紹介を英語、ポルトガル語タガログ語で用意した。
英語には自信がある。大学院で英語論文を読み漁った経験が活きた。
一方、ポルトガル語タガログ語は無学だったので、翻訳アプリに頼った。

顧客が帰る際に話す最後の挨拶を、現地語で話してみた。
顧客は驚いた表情をした後、すぐに満面の笑顔になった。

ポルトガル語は無学だったが、若い頃に学んだイタリア語に似ている所があった。
そして、好きなラテンロックバンドのサンタナが使うスペイン語にも似ていた。
なので、語学講座のCDデータをiPodに入れ、移動時間にヘビロテしたら、なんとなくカタコトができるようになった。
あとはテキストを読んで文法と単語を把握したい。そうすれば結構話せると思う。
 

情報紙も翻訳アプリを駆使して英語、ポルトガル語タガログ語バージョンを用意した。
反応は、まだよくわからない。
それでも翻訳は直訳なので、文章的におかしい所がある可能性が高い。
その旨を紙面に記入し、誤りがあれば教えてください、と各言語で記入した。

電話が鳴った。顧客のブラジル人からだった。
「間違ってるところがあれば教えてください、と書いてあったので、連絡しました」

反応があった。ちゃんと読んでくれていた。
仕事はなんと、翻訳の仕事をしているとのことだった。
連絡をくれたことに感謝し、それに乗じて文章校正の依頼をすると、快諾してくれた。

つづく。

遊び半分でやってると、仕事はおもしろい。