Case 34.「良い」の価値観の違いで相手を否定しちゃう時
患者「薬局で『良いよ』って言われたものが、医者に『意味ないよ』と言われることがあって。
薬屋「例えば?
患者「コンドロイチンとか。何もしないよりは、関節に良いよねって話をここでしてもらって、医者に行くと、そんなの意味ないから注射で直接関節に入れないと意味ないから、って言われて注射打つんですね。でも痛くて。あまり打ちたくない。でも効果はあるので打つんですけど、できるだけ打たずに済むのならと、日頃気をつけるといいこととかをここで教えてもらったりするんですよね。せっかくお金払ってんだし。
薬屋「そうですわな
患者「コンドロイチンを食事や健康食品から摂取して、それが体内で分解される。だから直接効くわけではない。そんなことはここで教えてもらってるわけだし充分承知なんです。その上で、でも何もしないよりかは少しでもマシなことをしたいじゃないですか。
薬屋「ですね
患者「でもそこで『効かない』と言われちゃうと、そりゃそうなんでしょうけど、なんかね、どうしたらいいかって思っちゃうよね。
薬屋「まあね
薬屋「こういう場合って、そのお医者さんの『良い』の価値観と、一般の『良い』の価値観が、ズレてるんですね。お医者さんの言葉には重みがある。重みがあるっていう意味は、医者が言ったから従ったのに悪化したりお金がなくなっただけの結果だったらダメだろ、っていう責任の重さ。そういう重みが医者の言葉にはある。ってことを医者自身もわかってるわけで、だとしたら効果がはっきり証明されてないことを勧めるのは問題があるわけで。だからコンドロイチン摂取を『良い』とは言えない。
薬屋「でも、患者としては何か努力したい。だから良さそうな物は何かと探し、相談してくる。その際に我々としては、なーーんも努力してないよりかは良いでしょ、って感じで食事や運動の提案、健康食品の話をする。明確な効果は証明されていないことを確認した上で、ね
患者「ですよね」
薬屋「で、そういう努力をすると、健康でいようというモチベーションが維持できる。これが結構重要だと私は思っていて
患者「うんうん。やる気になるし、元気になる。結局自分の体は、自分が口から摂取したものでできているんだから
薬屋「そんなわけで、お医者さんも我々も間違ったことを言ってるわけじゃないけど、求める価値観がズレていたら、真っ向から否定するような話になっちゃいますよね
患者「だよね。わかった。ありがとう。また教えて下さい。」