生理痛の強い傾向のある妻は婦人科を定期受診しているのですが

「少し話がありまして」

 

 そう妻がメッセージを切り出した。婦人科に毎月通っていた妻の調子は良くなっていると聞いていた。それでもお腹が痛いことが続いたという話を聞き、でも検査では異常なかったわけでしょ? と聞いた時の返事が「それについて、少し話がありまして」だった。少し嫌な予感がした。「そうか。じゃ、ちょっと電話しよか」と切り出し、心の準備をした。

 

 妻の話によると、実は子宮頸癌のステージ1になっていて、それが腹痛の原因だったとのことだった。癌なのだが、本当に初期なので癌の病巣は小さく、それを切除すればとりあえずOKなのだそうだ。おそらくその後は再発しないか定期的にチェックすることになるだろう。

 

「そうか。早く見つかって、よかったな」

 

 仕事柄、病気に関する知識と検索能力が得られていたこともあって、癌と聞いてもうろたえずに済んだ。あとは本人がどう思っているかだ。「気持ちは大丈夫か?」と聞いた。「うん。初期だし。小さいし」と妻は返事した。妻もそう不安になっていないようだ。この時点で二人とも死の可能性については「ない」と思っていた。これなら治療も落ち着いて進めることができるだろう。

 

「不安になるようだったら、いつでも話ができるように準備してるから、遠慮なく言って」

「うん」

そう言って、電話を切った。