会うたびに感謝してくれる妻

「こんなに毎週来てくれて、それは嬉しいんだけど、お金が大変じゃない?」

 

 妻は心配そうにそう言った。「それに、往復で体もしんどいだろうし、私も忙しいから時間作れないし、家事ばかりやらせてて体も休めてないでしょ? 家事やってくれるのは本当に助かるんだけど。。。」

 

「大丈夫やで」そう私は答えた。スーパーに並んでる中トロのブロックがとてもおいしそうな照りを見せている。あれ食べたいな。買おう。ブロック1個で2ー3人前になる。家に帰ってそれに包丁を入れる。音もなく切れる。小皿を用意して、大葉を敷いて、その上に切り身を並べる。ほっかほかのごはんを用意して、醤油を小皿に入れて、わさびを少し混ぜて、中トロの刺身を醤油につける。それをごはんの上に乗せて、一緒に食べる。「うんまーーーい!! ほんとにおいしい!!」と息子の声が出る。その様子を初めて見た時、ああ最高だなと思った。

 

 そんな感覚で夕食とか色々作ってるので、料理や洗濯などを負担に思ったことはなかった。どういう形であれ、短い貴重な時間に妻、息子、娘が視野に入っている状態が楽しめた。自分が何かに差し迫られている状態じゃないのが、良いのかもしれない。一緒にいて当たり前じゃないのが、良いのかもしれない。そんな風に、妻に話した。

 

 妻は私に感謝する。何度も感謝する。感謝してもらえるようなことができて嬉しい、と返す。返しながら、一緒に住んでいた時には家にいた妻に対して仕事から帰ってきた自分がここまで感謝してなかったことを思い返した。素敵な妻だ。

 

 2つの地域の往復にかかるお金のことを心配する妻。1往復に3万円前後かかる。それを月4回。ないしは5回したら。簡単に無視できる金額ではない。これに関しては正直、迷いがある。ただ、今は子供や妻に会う時間が楽しい。一緒に住んでいる時代は一緒にいるのが当たり前といった感覚だった。だから、毎週末会うのが当たり前だという感覚になったら、毎週往復するのをやめるのかなという気がする。当たり前の関係が楽しい、という感覚なら楽しいのだが、当たり前の関係が当たり前だ、という感覚になったらつまらない、飽きた、とかいう感じなのかもしれない。一緒にいるのが飽きたから別居の選択肢がスムーズだったということは決してないのだが、一緒にいなくなってから、一緒にいることがとても幸せなことなんだということが、とても実感できたのは事実だ。

 

「お金もかかるんだけど、今は会いにくる方が自分にとって大切な時間なんだ。」そう妻には伝えた。妻は再び夫に感謝した。