おっさんと言わないで

今日もまた夜に、仕事場のある地方に戻る。妻が最寄り駅へ車で送ってくれている。その後部座席に娘と二人で座っていた。娘は私に持たれたり、寝転がって私を膝枕にしたりしている。

「ほんと、娘は一包化さんにべったりね」と妻が言った。

「うふふふふーー♪」娘が嬉しそうに笑う。

「ありがたい話やで。」私はそう言った。

 

「お風呂も、いつまで一緒に入ってくれるんだろね」と妻が言った。

「うんとねーー、ずっと入るよ」娘が嬉しそうに言う。

「それはすごいな。でももう少しすると、おっさんと一緒にお風呂入るなんて、気持ち悪くなるよ。たぶん。」私はそう言った。

 

「ずっと一緒に入るだなんて、本当にパパのこと大好きなんだね」と妻が言った。

「じゃあ、しばらくは体洗ってあげられるな。いつの間にか立場が逆転して介護されてるかもしれんけどな!」私はそう言った。

 

「ねえパパ」娘がそう言って続けた。「パパは自分のことをおっさんって言うけれど、そんなこと言わないで。私にはパパのことはおっさんには見えないし、若いしかっこいいんだから、おっさんなんて言わないで」

 

そうか。パパはおっさんではないのか。

 

パパはかっこいいのか。

 

嬉しいじゃないか。

 

「そうか。わかった。ありがとう。じゃあ、もうそんなこと言わないようにするね」私は娘にそう言った。オッケー。まかせとけ。他の誰におっさんと言われようと指刺されようと、おまえにとってはかっこいいパパで居続けてやるよ。

 

今日も娘は、泣くのを一生懸命我慢して見送っていた。私はそんな娘を一度抱きしめ、「また週末会いに来るよ」と言って、新幹線に乗り込んだ。