パパと一緒にいるのを見られるのが恥ずかしいお年頃になった娘のきっかけ

 最初のきっかけは、娘が「私、滑りたい」と言ったことだった。娘の視線の先には、冬のイオンモールの中に即席で作られた子供用スケートリンクがあった。

 

 10分いくら、といった設定で具体的な金額は忘れたが、コストパフォーマンスは悪いなぁというのが第一印象だった。これならスケートリンクでガッツリ滑るか、ローラースケートのようなもので気軽に自宅周りで楽しめるものの方がいいなと思った。そこで娘はクリスマスプレゼントにローラーブレードを願い、無事ゲットしてさっそくいろんな場所で履いて滑った。

 

 外で滑りたい、と言う娘に付き合って、家の周りで娘とローラーブレードで遊んだ。私の道具はなかったので、娘の滑りに同行して滑り方を教えたり、追いかけっこをしたりして楽しんだ。自分もスケートは嫌いではなく、滑る分に関しては最低限の滑りはできたし楽しみは知っていたので、娘が楽しそうに滑っているのを見て自分も一緒に滑ると楽しいだろうなぁと思い始めた。そこで思い切って、自分のローラーブレードも購入することにした。

 

 ある日、娘はいつものように「パパ、ローラーブレードしたいな」と言ってきた。私は「ええで。やろう」と返して、「今回はな、パパも一緒に滑ろうと思うねん。パパのも持ってきた。見て!」と返した。「え」と娘は言った。私の期待とは裏腹に、娘の表情は少しこわばっていた。そして「一緒に行くのはいい。は、恥ずかしいから。。。」と言った。そうか。とうとうこの時が来たか。そう思った私は「じゃあパパは滑らなくてもええよ。行こうか」と声をかけた。それに対しても娘は「いや、やめとく」と言った。

 

 仕方がないので、自分一人で滑りに行った。

 

 いざ滑り出したら、それはそれで楽しかった。少しずつ昔の感覚が蘇る。30分ほど滑って帰宅すると、迎えに出た息子が「大の大人が一人で滑って恥ずかしくないの? 周りの目は気にならないの?」と聞いてきた。自分の好きなことをやるのに、周りの目なんて関係ないやろ。そう私は返した。娘はスプラトゥーンのネット対戦を楽しんでいた。もう一度娘に一緒に行かない?と聞いた。娘は「いや、いい」と答えた。自分一人滑る気もなくなったようだ。じゃあ今度滑る時には妻を付き添いに誘おうかな、と想像するのだった。