もし一緒に働いている人が犯罪者だったら

 もし、一緒に働いている人が犯罪者だったら、自分はどうするだろうか。


 もし、一緒に働いている人が犯罪者だったら、会社としてどう対応すべきだろうか。


 もし、一緒に働いている人が犯罪者だったら、仲間の身と心をどうやって守っていくだろうか。


 もし、一緒に働いている人が犯罪者だったら、その犯罪者とどう接していくのだろうか。


 泉と他愛もない話をしながら、後藤はそんなことを考えていた。そして、泉はどう考えているのだろうか。後藤は探りを入れてみた。


「そういえば今、亀田さんがこちらへ異動になってしばらく経ちますが、実際どうですか。」


「う〜ん。ちょっと話せないし、でも戻すこともできないし、てとこですねえ・・・」泉はきまりが悪そうな表情を見せ、苦笑いした。後藤は相槌を打つように微笑した。


 泉は口の軽い人だ。後藤は現場の勤務状況を探ったまでだったのだが、泉は異動の真相についての話をほのめかし、でも話せないと結論づけている。本当は話したいのだろう。あまり隠し事のできない、いい人だ。そして、泉にしてはがんばって秘密を守っている。偉いな、と後藤は思った。そして、自分はその秘密を既に知っていることを、泉には秘密にし続けることにした。


 もし、一緒に働いている犯罪者が、その犯罪が後藤にバレていることを知った時、犯罪者は何を考え、どう行動するのだろうか。