新しい宿と、新しい刺激

 新しい宿を使い始めてから3週間。毎日宿泊しているわけではないので、まだまだ泊まるたびに小さな刺激がある。宿という呼び方をしているが、宿泊施設を利用しているのではなく、会社が賃貸している社宅をひと部屋借りたというのが事実であるので、第二のマイルームと呼ぶべきなのだろうが、もともと通勤時間を圧縮するために仕事場に近い部屋で寝泊まりするだけの目的で借りた部屋ということもあり、自分の感覚的に「宿」と表現するのがしっくりくるので、そう呼んでいる。宿の料金は、月25,000円。だいたい1日1000~1500円、といったところか。

 

 寝泊まりする目的だけのために借りた部屋なので、部屋は贅沢に3部屋もあるが、どの部屋にも照明がない。バスルームと洗面、トイレにはもともと付いてあった白熱球があるので、最低限の光源の確保には支障ない。エアコンは2台装備されており、空調は問題ない。料理もここではしないので、ガスコンロや調理用IHもない。洗濯機も用意していない。洗濯は元のマンションでまとめて行う。でも、これは現地で洗濯できた方が時間も節約できるし、なにより衛生的なので、洗濯機は後日購入するかもしれない。最終的には引き払うことが確実なので、将来的に捨てると決まっているものを購入するのは躊躇するのだ。普通に買えば30,000円は見ないといけないし。ただ、ネットで1万円台で売っているものがあるとのことなので、それならコストパフォーマンスも問題ないので買おうかなと思う。でも捨てる時のことを考えると、やっぱりめんどくさいなあと思う。第二の部屋なので、去る時は車で荷物だけさーっと持って帰るだけでおしまいにしたいのだ。粗大ごみの処理は基本的に面倒だ。

 

 なんにもない部屋に戻って、お風呂を沸かして、入って、寝る。朝は、カロリーメイトを齧って、身支度を済ませて、出ていく。基本はそれだけの宿。でも、寝る前や寝起き、お風呂を沸かしている間の細切れ時間が生まれる。最初は、とにかく寝ていた。睡眠不足だったのだろう。夜10時から朝6時まで寝る。標準的な8時間睡眠。それが体をとても癒してくれた。通勤2時間分を睡眠に充てられただけでも、この宿に住めたのは大きな収穫だ。今はそういう時間は、iPodを取り出してネットをしたり、パソコンを開いてこうして日記を書いたり、オンラインゲームにログインログアウトしたり、といった感じで過ごしているので、暇を持て余すことはない。ポケットWi-Fi端末のおかげで、どこにでもネットで暇つぶしをすることができる。なので、この宿にもiPodとパソコンを持ち込むだけで快適な時間が訪れる。すると、だんだん夜更かしになって朝がつらくなってきた。なのでしばらくはまた寝てばかりの宿泊になるだろう。

 

 冷蔵庫も用意していない。そこまで飲み物に依存した生活を送っていないし、飲み物が欲しければ1.5Lのペットボトルが110円程度で手に入るので、それを持ち込むだけだった。それでも今日、弁当用にマンションから持参した小さな保冷バッグを見て閃いた。これに保冷剤を入れて、飲み物を持ち込んだら冷蔵庫として機能するのではないか? さっそく実行し、お風呂上りにイオンウォーターを飲んでみた。キーンと冷たい感覚が全身を浸していく。まさに、「染みわたる」感覚。やっぱりお風呂上がりには冷えたイオンウォーターだね。これは冷蔵庫と遜色ない。当面はこのパターンで飲み物を運用していこうと思った。

 

 不便な点がもう1つある。固定Wi-Fi回線を新たに契約しなかった。固定費を増やしたくなかったのだ。それにより、妻と子供達とテレビ電話するのに制限がかかる。ポケットWi-Fiなので、通信料や通信制限を気にしなければならなくなったのだ。なので、当面は宿内でのビデオ通信をしないことが決定されている。でも、自由にできないとなると、自由にしたくなるものである。今のところメッセージを送り合うことで満足できているが、今後はどうなるかは未知数だ。

 

 そういったことも含めて、ただ自宅と仕事場を往復するだけでは感じられなかった新しい刺激が、今は楽しい。窓の外からは虫の声が入ってくる。長く防音のマンションに住んでいる間に、忘れてしまっていた感覚だ。夜に虫が鳴くという感覚でさえ、しばらく体感していなかったら忘れるものなのか。そういう驚きもまた、新鮮だった。