一期一会とは言うけれどゲームのやめ時は縁の切れ目ってドライすぎやしないか?

オンラインゲームをたくさんやっていた時期があった。

 

基本はひとりでゲームを遊ぶスタイルのもので、ゲーム内にチームのようなものを作って、そこに仲間を集めて、仲間と協力してゲームを単独で楽しむ以上に楽しめるシステム。そのようなシステムを組んでいるオンラインゲームでは、チーム内の交流もゲームの楽しみのひとつとなっていて、自分もそのゲームのプレイと共にオンライン上の人と交流することも楽しんでいた。

 

チームは基本的に離脱は自由で、誰でも簡単に離脱できるかわりに、長くチームにいれば、長く一緒にプレイしてくれる人ということで、その分信頼度は高まり、より深く仲良くなれる。そして、ゲーム以外でも交流が広がり、それが自分の人生を豊かなものにしてくれる。そう思っていた。

 

そうしているうちに日常が忙しくなり、オンラインゲームばかりしているわけにもいかなくなってきた。最終的にはゲームのイベント自体も楽しいと思えなくなり、そのチームを抜けることにした。それでも、チームの仲間とはそれなりに仲良くやってきたという思いがあり、チームを離れても交流が続くといいなあという思いから、このブログとツイッターのアカウントを紹介して、これからはこちらでもよろしくお願いしますと誘導した。

 

その思いとは裏腹に、その後チームの人たちとの交流が続くことは、ほぼなくなってしまった。何か悪いことをやってしまってたかな? と思うくらいに、交流がなくなってしまった。そのチームには3年半近く居続けていたこともあり、チームには親しみを持っていたのだが、そのチームのメンバーと脱退したメンバーとが一緒に在籍できる無料オンラインサロンのような場所でも、自分のアカウントは排除されていて、かつての仲間たちと交流することはできなくなっていた。ツイッターに関しては、かつてチームだった同志からはほとんど、フォローをことごとく外されていた。そしてこちらから絡んでも、自分に対してのみ反応がない。どうやらミュート(自分のメッセージが相手に届かないように設定)されてしまっているようだ。ちなみにそのチームは、ゲーム内では割と雰囲気が良いと評され、人気な方に属するチームだ。

 

我ながら、人望が無い。無いのだが、それにしてもあまりに冷たくないか? ゲームでチームを離れたら人間関係もおしまいなのか? 自分はチーム内の人達とは一般的な「友達」のような感覚ーーーーーー時を経て久々に声をかけても、ひさしぶり!何してる? といった感じで関係を再構築できる、信頼しあった関係だと考えていたが、どうやら事情は異なり、ここでの関係は元カレ・元カノのような、もしくはセフレのような、一度疎遠になったら蔑んだり黒歴史化するような代物で、再構築なんて到底望めない、過去に捨てていくべき関係、という取り扱いのような雰囲気を感じた。そんな関係にならないようにするために、チーム内外で交流をしてきたのだが、全く効果がなかったようだった。

 

それともチーム内でいるからにはしぶしぶ仲良くしてくれていただけなのか? そんな感じもする。それならただ自分に魅力がないだけで、ただ情けないだけではある。それでも、このゲームのために費やした時間に意味はあったのか? ゲームをやめたらなくなってしまう程度の交流に、費やした時間に意味はあったのか? そんな思いに包まれながら、妻と喫茶店でドリンクを飲んでいた。

 

「ね、あの夫婦見て」と妻が言った。女性の右耳に、黒地でオレンジのラインが鮮やかに施されたワイヤレスイヤホンが装着されていた。それは男性の左耳にも同じものが装備され、パソコンで再生されている動画の音声が流れているようだった。二人はふふふと笑いあい、楽しそうな雰囲気が作られていた。「なんか、いいよね」「そやな。ええ感じやな」。あのー、と後ろから声をかけられた。店員さんだった。これ、新作のドリンクなんですけど、よかったら、お試しいかがですか? と、新作のドリンクを入れた小さなカップを二つ、テーブルに置いていった。「なんか、かわいいカップだね」「絵になるな。写真撮ろうか」。そのかわいいカップを並べて、二人で写真を撮り合った。新作のドリンクは、あっさりしておいしかった。

 

「私の場合はね」妻が話し始めた。「私は、ネットで関係した人達と友達になろう、友達関係を続けていこう、とは思ってないのね。だから、あまり関係が長く続かなくても、そう残念でもないんだけど・・・・というのはね、」

 

「例えば、相互フォロー関係になったこの女の子。まあまあかわいいんだけど、この子、写真をアップする時にね、自分よりかわいくない子と写ってる写真では顔を隠さないんだけど、自分よりかわいい子と写ってる写真では、そのかわいい子の顔を絵文字とかで隠すの。

そんな性格の女の子と、仲良く友達を続けたいとは思わないよね。だから、まあその女の子はどうも1番になりたい傾向のある子だったのかな? 承認欲求が強かったのかな? たくさん褒めてもらいたかったみたいなんだけど、私はつきあいで褒めるとかしないから、正直に褒める時は褒めて、何も感じないときはスルーって感じでつきあってたんだけど、なんかそれが気に入られなかったみたいで、気づいたらフォロー外されてた。先に外されたから、なんでおまえごときに・・・とは少し思ったけど、おまえごときに・・・って思う程度の人だったから、すぐにどうでもよくなって、なんにも思わなくなった」

 

「女同士だから、ドライなんだよね。基本、自分の事が一番大事、って女ばっかりだから。ほら、女って時々フォロワー整理するじゃん。しかも、わざわざ『そろそろフォロワー整理します』って発言して。そう発言して反応してくれる人は、自分に興味を持ってくれてる人で、反応ない人は、興味を持ってない人っていう勘違い判断をして、切っちゃうのね。本当は興味を持ってるけど反応せずに見てる人だって多いんだけど、かまってちゃんだから、かまってくれない人は自分に益を与えない人だってことで、切っちゃう。そんな人ばっかりだから、気軽に付き合っても、やがて切られる。その女にある程度の媚を売らないといけないのね。つきあいで、ね。でもさ、私も女だから、イケメンならまだしも、なんで女にわざわざ媚を売らないといけないの? て思うし、そんなことで別にフォロー切られても、ああそうですか、ま、いっか、て感じ。どうでもいい」

 

「私の場合は、自分の趣味に合う人で、そういう余計な気を遣わない人と必要最低限話せれば十分で、雑談とかは旦那さんとできれば十分だから、ネットで友達付き合い。うん、なくていいかな。だから、長く付き合える人がいてもいいけど、いなくなっても、別になんとも思わないかな」

 

そう言って妻は、すっとドリンクを飲んだ。なかなかおもしろい価値観だ。ネットの向こうの人との付き合い方が二人の間でこんなに異なるのもおもしろいが、彼女の価値観に影響されて、私と長く付き合っていこうとしなかった人達は、実はたいしたことない人達だったのかもしれない、と考えることもできて、幾分か自分の気が軽くなった。それもおもしろかった。そもそも自分は、去っていく人間を追うような奴ではなかった。自分のことを気に入ってくれる人をまず大切に。それだけでも、結構豊かな人間関係になった。そして、気に入ってくれない人に手出しをして、無駄に好かれなくて悩むこともない。自分は他人に求めすぎていたのかもしれないな、知らない間に。そう反省した。

 

「別に長く付き合えなくても、いいじゃん」

「そうやな。既に長く付き合えて、楽しく話せる人がおるもんな。ここに」

 

スマホの画面を閉じた二人は席を立ち、家に向かった。もうすぐ子供が、学校から帰ってくる。

 

妻がジムで変なおっさんにナンパされているんだが

午前の仕事おわりー。おつかれさん。

妻「私の方は、ジムに行ってきました」

 

それは素晴らしい。どんどん痩せて、どんどん綺麗になっていってほしい。そしたらどんどん惚れていくよ。

妻「ジムで、変なおっさんに声かけられたんですが」

 

まじかよ。景気のいい話やな。それで?

妻「会員のおっさんだから、また会うかも。めんどくさいですね」

店員にチクるのはどうでしょうか?

妻「おさわりされたらチクります。おっさんは女子ならなんでも良いんでしょうか。。。」

 

さわられる前に危機回避してもらいたい。でも、おまえはどうも声をかけられやすいっぽいね。

妻「隙だらけなんですかね・・・」

それか、エロいオーラを出してたか。

妻「頑張ってるねー、あなた痩せたら絶対美人になるねー、って言われて。そこまでは良かったんですが」

 

が。

妻「おっさんの女子と仲良くしたい、おっさんも若々しくなってモテたい、おっさんもデートしたい、などと欲望を延々と聞かされ」

れ。

妻「私が指輪もしていないから独身と思われたのか、彼氏欲しいでしょ、と余計なお世話を言われ」

言われ。

妻「連絡先を聞かれて終了です」

 

へえー。夫がいる話した?

妻「結婚して子供もいますって言ったら、えーそうなのー、から、旦那さんとは仲良いんだ? みたいに言われたので、普通ですね、と返したら、うちも結婚してるけどさぁ・・・・みたいな話をし出そうとしたので、『死ね』と心の中で思って、子供の迎えの時間なので、と言って去ってきました」

ごくろうさまです。

妻「結婚してるのにナンパしてくるおっさんに殺意です」

 

イケメンではなかった?

妻「体は割とムキッとし始めてる普通顔の人でした。ブサイクではないですね」

他の女にも声をかけてることでしょー。今後絡んでこなくなるといいね。あとをつけられないようにな。

妻「そういうおっさんは幅広く声かけて当たればと思ってるでしょうね」

お金は貢いで欲しいけどな。

妻「お金が絡む相手は最終的に絶対体の関係になりますし、体が無しだと怨恨で面倒な事になるので嫌です。寝ろというならできますけど。。。。」

 

へー。そうなんだ。寝られては困るけれども。

妻「おっさんと寝て稼いで来いって言われたら、ぶっちゃけできますね。相手が多少好みなら。」

寝ずに稼いでもらいたいものです。冗談だけど。仕事に戻るね。

妻「お疲れさまです」

 

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愛し合う夫婦といっても離れて暮らしているので、実際会ってない間に好きな事をしようと思えば、できるんですよね。自分も、相手も。なので、二人を繋ぐものは、信頼だけ。こういう会話ができる間は大丈夫。のはず。うん。。。。。大丈夫かな? 大丈夫やろ!!

CASE 6. 薬を飲んだら薬疹が出たんだけど?

さゆり:

一包化さん。薬のことで相談です。もしよろしければ教えてください。

昨日、通いの内科で処方してもらったのですが、今薬疹が出てすごくかゆいです。

風邪の症状とのことで、以下を処方してもらいました。

・ロッキンチェアー錠60mg

・リックフラベ錠20mg

・シーチス錠500mg

・ニューマレッチ錠2mg

・AMPCカプセル250mg

 

リックフラベとAMPCが今回初めての処方です。どれも1日3回服用です。

以前、SBT/ABPCで水疱、かゆみがあり、皮膚がむけてしまったことがあります。これはペニシリン抗生物質がアレルギー症状を起こしているのでしょうか?

今回は指先だけが強く症状が出ていて、ほかのところは何も出ていません。もし薬疹だったら全身に出るのでしょうか?

 

病院は土日休み、処方してもらった薬剤師さんは相談に乗ってくれませんでした。

今は薬を中断してますが、どうにもガマンできずに引っ掻いてしまい出血してしまってます。かゆみを抑えるなにかアドバイスがあったらぜひ教えていただきたいです。

 

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一包化:

了解です。

 

かゆみはニューマレッチ錠を続行することで緩和できます。まずはそれ。

 

そして、市販のステロイド塗り薬、または花粉症の飲み薬が効くでしょう。プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステルの含有する塗り薬が使いやすいです。エステルの組み合わせが異なるとステロイドの強さが変わるので、その辺に気をつけて売り薬の成分をよく見て買うか、ドラッグストアの薬剤師にご相談下さい。(休日は不在のことも多いです)

 

ご指摘通りペニシリンアレルギーの可能性が高いのでAMPCカプセルは中止。念のためにリックフラベも中止。市販の花粉症の飲み薬は、アレグラ、クラリチン、アレジオンのどれかが良いでしょう。花粉症のお薬は抗アレルギー薬なので、薬疹など皮膚症状にもよく効きます。これ、マメ知識です。

 

薬疹の部位については薬剤差、個人差もあり、症状の出方はランダムです。なので、あまり考えなくてよいです。出血はかゆみを抑えるのが優先で、化膿しないようにだけ気をつけていればよいでしょう。

 

アレルギー反応はひどくなると大変なので、上記応急処置で対処できない場合は時間外受診も遠慮なくして下さい。

幸運を祈ります。

 

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さゆり:

ありがとうございます!!今ニューマレッチ飲んできました。以前の薬疹はアレグラを飲んで落ち着いたので明日買ってきて試してみます。

 

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さゆり:

ピリピリかゆくて寝れないのですごくイライラしてたのですが、一包化さんのおかげでかなり気分が落ち着きました。

相談してよかったです。本当にありがとうございます!

それぞれの愛情表現

「ねえ、お父さん

なに?

「オレの頭を叩いてみてよ。叩くことができたら1000円あげる!

マジかよ(笑)余裕じゃん。

「絶対叩けないよ!?

そう言いだした息子は、うねうねと頭を動かし、私の攻撃が当たらないようにがんばっている。面倒な息子だ。そりゃ本気出せば簡単に叩けるんですけど、適当に優しく手を振って空振りしたら、「ウエーイ!!叩けなかったー!!絶対叩かれないー!!ウエーイウエーイ!!!」と言われてドヤ顔されるのがウザいんですよね。なので確実にぺちと叩かないといけない。それが面倒で、ね。そんなことを考えながら、飲んでいたとろけるミルクティーのペットボトルをテーブルに置いて、息子の頭を叩く態勢を整えました。

 

頭を動かすスピードをさらに増していく息子。そんなに頭を動かしてたら、気持ち悪くなって疲れて動きをやめるんじゃないのか? このままずっと何もせずに様子を見てやろうか、と思ったその時、動かしていた息子の頭が、先ほど私がテーブルに置いたとろけるミルクティーのペットボトルに『ガッ!!』とぶつかりました。

「いたっ!!

ぎゃはははは!!! じゃあおまえ、ペットボトルに1000円な!!!

「ペットボトルに?? それ意味あんの??

んなもん持ち主のオレが回収するにきまってるやん。

「そんなのズルイ! モノだからノーカン! ノーカ」

ぺち!

「いたっ!!」

はい1000円ゲット。「うわ!やられた!ずるい!今のなし!」

 

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「ねえ、パパ! 自転車乗りたい!!

笑顔で駆け寄る娘。ええよ。俺がおる時にしか自転車乗れないんだろ?

「うん。ママは忙しくて、自転車につきあってくれないの。

せやろな。ママ基本的に体力ないから。走るとかいうのは、自分の人生から削除してるやろからな。でも、友達と遊びに行く時に自転車乗ってへんの?

「今週はね、運動会の練習で学校の時間が遅くなったの。だから、友達とは遊んでなくて、自転車乗ってないの。

そうなんだ。ま、買い物ついでやな。この買い物したやつ、籠に乗るか?

「籠に乗せると、腕がだるいね。大変。

せやな。重くなるから、ハンドル動かすの大変やろ。

「うん。こうなるなんて、知らなかった。

なんか楽しそうな表情してるね。

「うん。楽しい。でも、腕がしんどいよ。公園寄っていい?

ブランコに乗りたいんだ?

「そう! パパとブランコに乗るの、楽しいの!!

公園寄ったら冷凍食品が溶けちゃうんだけど。

「ええー!? でも、ブランコしたいな。。。。

ふふふ。しゃーないな。ちょっとだけやで?

「やったー! 嬉しい!!

 

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妻「・・・・・・・・・

私「・・・・・・・・・

妻「・・・・・・・・・

私「・・・・・・・・・

妻「・・・・・・・・・

私「・・・・・・・・・

 

ガチャ。部屋の扉が開く。

息子「おなか減ったー

私「ああ、冷蔵庫の中にこんにゃくゼリーあるやろ。それ食べてええよ

息子「なにやってんの?

私「見た通り。寝とんねん

息子「いつもくっついてるね

私「まあな。普段は離れてるからな

息子「オレもパパにくっつく

私「なんでやねん。ゼリー食っとけ

息子「じゃあゼリー食べたあとね

私「ママの番が終わったらな

バタン。部屋の扉が閉まった。

 

妻「・・・・・・・・・

私「・・・・・・・・・

妻「・・・・・・・・・

私「・・・・・・・・・

妻「・・・・・・・・・もう今日で帰っちゃうの?

私「・・・・・・・・・まあな。明日からまた仕事やし

妻「・・・・・・・・・さみしい

私「せやな。ま、2週間後来るから、また

妻「・・・・・・・・・

私「・・・・・・・・・

妻「・・・・・・・・・何時なの? 今日は?

私「ああ。いつもの7時の新幹線やで

妻「7時、か。

私「うん

妻「短いな・・・・・

私「せやな。

妻「・・・・・・・・・

私「・・・・・・・・・

 

妻と二人でいる時間は、割と抱き合っていることが最近多いです。

次に会う時はどうかな? お楽しみに。

 

とある女のダイエットがなかなか成功しない理由:夢一夜

こんな夢を見た。

 

(刺激的な表現を含みますので、十分にご注意の上お読みください)

 

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「渚は、本当にかわいい。あとは、この贅肉が少しでも少なくなれば、完璧なのに」

 

夫からそう言われた渚は恥ずかしくなって、軽く夫の体をぺちと叩いて「言わないで」と怒っていたが、それ以来、時間があけば近所のトレーニングジムに通って運動をするようになった。夫はこれまでも、渚の体を愛撫する際に、不意にお腹の肉を掴んだりして、そのたびにその手をぺちと叩いていたのだが、自分自身も今の贅肉でたるんだ体を気に入ってるわけではなく、また夫の期待にも応えたい思いもあった。もうトシなんだからやせたって意味ないよ、と開き直った態度をしてごまかすのをいつまでも続けたいわけではない。そんな折に、近所のトレーニングジムのキャンペーン広告が目に入った。週3回のプランで3か月無料。そのキャンペーンをきっかけに、渚はそのジムに通うように努力した。

 

食事にも気をつけた。食べる量はこれまでの8割に制限し、それを5割に近づけていこうとしていた。間食をとることはほぼなく、夫が大好きなクレープを食べに行こうと誘われたときに、一緒に食べる程度。それ以外の間食はとっていなかった。それでも、贅肉を思うようにそぎ落とすのは難しかった。なかなか落ちない。年齢の影響もあるのかもしれない。もう若い20代ではない。それでも、年齢を重ねるとこんなにも代謝が落ちてしまうものなのか、渚はなかなか落ちない体重に悩んでいた。

 

ジムへ歩いていく時、また、ジムから家へ歩いて帰る時、渚は妙にそわそわしてしまう。誰かが背後から声をかけてきたら、どうしよう。そう不安になりながら、そんなことにならないように、気をつけて歩く。足早に。足早に。

過去に、とても怖い思いをしたことがある。内科に受診したその帰り道、不意に通りすがりの男から声をかけられた。

 

「お姉さん、綺麗ですね。僕と、セックスしませんか?」

 

時間はまだお昼の2時を過ぎたあたりだった。いくら周りに人があまりいないとはいえ、あまりにも下劣な誘いだ。渚はその男を無視し、足早に帰り道を急いだ。男は「おねーさーん」「綺麗なおねーさーん」と言いながら追いかけてくる。結構しつこかった。渚はだんだん必死になって逃げた。それでも追いかけてくる。そのうちに、渚の体力が尽きはじめ、男に追いつかれてしまった。男は渚の肩をぐいと引っぱり、罵声を浴びせた。「(綺麗だからって)調子のんな」そう言って、男は去っていった。

 

「調子のんな」「調子のんな」その言葉が、渚に強烈にフラッシュバックを引き起こした。

「調子のんな」「調子のんな」「かわいいからって調子のんな」そう吐き捨てながら、男は肉棒を渚の膣に突っ込み続けていた。

「調子のんな」「調子のんな」「かわいいからって調子のんな」自分勝手にレイプされ続ける自分の体に絶望しながら、渚の頭の中にその言葉が響き渡った。

 

当時18歳だった渚はオシャレが大好きで、存分に自分をかわいく飾っていた。今、渚をレイプしているその男は、少し前まで「渚はかわいい」「渚はタイプだ」などと言って口説いてきていた。それはここ最近ずっと続いていたのだが、渚はその男をそれほど好きではなかったので、適当に流していた。すると男は冗談半分な感じで「調子のんな」と言って、体を押さえてきた。その男の力は、握力15kgしかないか弱い渚が抵抗しても、びくともしなかった。その時に渚は、その男が冗談を言っているわけではないことに気がついた。

 

「ちょっと何やってんの」「やめてよ」抵抗する渚をものともせず、男は侵入してきた。「やだやだやだ」「ひどいよ」「なんでこんなことするの」泣き叫ぶ渚に男は「お前の見た目がそんなのが悪い」「その見た目で誘ったようなもんだ」「かわいいからって調子のんな」「おまえがそんなだから悪いんだ」と、渚を悪者にしてレイプを続けた。

 

自分の膣に肉棒が突っ込まれ続けるのを絶望的に見つめる渚。頭の中に混乱が駆け巡る。

「なんでこんなひどいことをされているんだろう」

「私がかわいく飾っていたのが悪かったの?」

「じゃあ、見た目が悪ければ襲われずに済むの?」

「見た目が悪ければ怖い思いをせずに済むの?」

「そうかもしれない、見た目が悪ければ女として興味は持たれない」

「そうしたら、こんな風に襲われずに済む。怖い思いをしなくて済む」

そうして、渚の身を守るために、脳の中で由香が生まれた。

 

渚が夜に寝静まった後、由香が現れて寝静まった体を起こす。体がやせ始めている。やせてかわいくなってしまったら、また怖い思いをする。危険。危険。見た目を悪くしないといけない。

由香は台所へ向かった。見ると、お皿の上にパンケーキがたくさん重ねておいてあった。子供たちがおなかをすかせた時に、食事時間までのつなぎに活用すると良いだろうと、夫がたくさん焼いておいてくれたものだ。ちょうど良い、と由香は手を伸ばした。1枚。2枚。3枚。4枚。5枚。満腹で苦しい。苦しくても食べる。食べる。食べる。食べながら眠気に襲われる。これで少しは太れるかな。怖い思いをしなくて済むかな。そう思いながら、由香は脳内へ戻っていった。

 

朝、目覚めた渚は、深夜の由香の行動を全く知らない。朝食を食べる気にならない理由を、ダイエットに慣れてきたからかな? と思いながら、でもなかなか痩せないなあ、と思いながら、朝の支度を進めていった。

 

渚が本当に痩せることができる日は、来るのだろうか。

渚が本当に救われる日は、来るのだろうか。

CASE 5. 坐薬が正解で座薬ではないとあれほど

患者「この熱さましの座薬、どれくらいの期間、もつんですか? 品質。

薬屋「ああ。うちで用意した坐薬は1年もつで

患者「へえ。1年もつんですか

薬屋「うん。うちではよく動いてるからな

患者「よく動いてる?

薬屋「たくさん納品して、たくさん患者に渡してるから、薬の回転率がよくて、新しい坐薬を用意でけるんや

患者「ああ、そういうことなんですか。ということは、ほかの所でもらったやつはーーー

薬屋「知らん

患者「知らん(笑)て

薬屋「ほかの店の事情はわからんからな。たまにしか出ない坐薬だった場合、期限が近いけどその病気を治すために薬を使う期間内なら大丈夫、てなったら、それが渡されるやろ。処方薬は基本使い切りが前提やからな。

患者「つまり、処方日数が使用期限だ、と

薬屋「そうゆうことや。うちでもそうゆう薬はある。その熱さましの坐薬は、たまたま、期限が長い、ってだけや

患者「そうなんですね。とりあえずこの座薬は、また熱が出たときに1年以内なら使える、てことですね?

薬屋「まあな。でもな、あくまでも応急処置やで

患者「はい

薬屋「この坐薬、小さいから、子供に使うんやろ?

患者「そうです

薬屋「子供、日に日に大きくなるやろ。今はこれで効くけど、いざという時には子供が成長した分『量が少なくて効き目が不十分になった薬』になってるかもしれん

患者「なるほど

薬屋「・・・・とまあ、それくらい頭に入ってれば、うまいこと使えるやろ

患者「詳しく教えてくださって、ありがとうございます。じゃあ、適切に保存して、期限内で必要な時に助けてもらいます。この座薬に

薬屋「坐薬、な

ゆっくり休んで子供との時間を楽しめるわけないだろ!!

そういえば、先週CDを借りてたの忘れてた。今日返さないと、な。

事務の女「へえ。そうなんですか。何のCDを借りたんですか?

 

えー? 5枚借りたのな。最初は4枚の予定やってんけど、なんか、4枚だと1200円で、5枚だと1000円になるから、5枚借りた方がいいですよ、って言われたから。

女「ああ。それなら、5枚借りた方がトクですよね。

 

せやろ。だから5枚借りたんやけど、アーチストは、知らんと思うけど、

Davis Redfieldのダンスサウンドのと。これはイマイチやった。

女「イマイチだったんですか(笑)

 

うん。で、他には、BON JOVIのGreatest Hitsと。まあこれは定番。

あとは、UnderworldUnderworldUnderworld、って、Underworldを3枚借りた。

女「へえ。それ、どんな曲なんですか?

 

どんな曲?? うーん。Underworldな。なんていうかなあ。

まず、全般的に暗い。で、基本インストゥルメンタル(歌詞なし)。いや、実はボーカルあるんだけど、ボーカルも楽器の一つになってる、みたいな。ボーカルは念仏みたい。

女「念仏って(笑)

 

で、基本の旋律があって、そこに音楽をひとつずつ重ねていって曲ができてる感じで、それがリズミカルでテンポがいいから、超ノれるのな。音はエレクトリカル系。

・・・・てか、聴いてみた方が早いから、聴いてみる?

女「うん、聴いてみたいかも

 

マジか? しょーもなかったらゴメンな。(iPod Touchを取り出す)この曲がUnderworldでは一番聴きやすいかな。Rez / Cowgirl、ってやつやけど。はい再生。

女「・・・・あたし、結構好きかも。へえ。こんな感じなんですか。いいですね。

 

まーじーで!? それ、かなり嬉しい。そんなん言われたらこっちの語りに熱がこもっちゃうんだけど?? この曲、この辺はメインの音はなんとなくいい感じやけど、リズム取りにくくて混乱するやろ?

女「そうですね。ちょっと混乱してます。でも、好きな感じですよ?

で、うん。もう少し。もう少し。・・・・・・ここ!

女「!!

 

ビターン! ってリズムが合うやろ?

女「へえ。いいですね。これ、私も借りに行きます!

まーじーで?(2回め)めっちゃ嬉しい反応やん! じゃあCDのタイトルと歌手のメモ渡すわ。Underworldの、Everything, Everything、てゆうCD。ライブ音源なんだけど、ノリが良くて聞きやすいと思う。まじで借りて聞いたら教えてよ!

女「わかりました♪ 

 

Underworldってさー、周りに知ってる人なかなかおらんのよ。有名なはずなんだけど。なかなかおらんの。だから話して盛り上がれるとしたらめっちゃ嬉しい。今度家族に会いに行く時も、これガンガンに流して気分よく行くねん。

女「そうなんですね。いいですね。今度の週末ですよね、会いに行くの。

そうそう。

女「家族と楽しんで、ゆっくり休んでくださぁい♪

おう。楽しんでく・・・・・・・ちょっと待って?? 家族と一緒にいてゆっくり休んで楽しめるとか、ないで?

 

女「そ、そうなんですか??

せやで。楽しんではいるけど、ゆっくり休んでへん。あれは、労働や。楽しい労働。

女「えー?? 立花さん、今度の週末まで12連勤で、その後2日休みになってますけど・・・

それは、実質、14連勤、なのです!!!!

女「ええーーーーー!!

さ・ら・に! その後に月火水木金土と続くので、20連勤となるのです!!!!

女「20・連・勤!!!!

 

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先日気づいたのです。子育ては余暇ではない、と。

遅まきながら。本当に、遅まきながら。

 

そのことについて話しましょう。

3月まで息子と2人で暮らしていました。レンタルCDのカードを作ったきっかけは、息子がサカナクション新宝島を自分のiPod Touchに入れたいと言ったことでした。で、カードを作ってCD借りて、iTuneに読み込んでiPod Touchに移し、完了。CD返却後、後日また別のCDを借りような、という話を息子としていました。

 

ところが、そんな日が来ることはとうとうありませんでした。私が仕事から帰宅する。息子が私に甘える。部屋の中でプロレスが始まる。さっさと見切りをつけて夕食を私が作る。二人で食べる。お風呂に一緒に入る。出る。布団をしく。寝かせる。時計を見ると22:00を軽く超えています。

 

こんな毎日が基本、続くんです。CDをレンタルするということでさえ、日常生活の予定にしっかり割り込ませないと、なんとなく行きたいなあと思っているだけでは子育てという大波に飲み込まれて消えてしまいます。毎日子育てをがんばっていると、そんな大波に個人の趣味の予定が消えて行ってしまっていることにさえ気づきません。なぜなら、子育ては意外と結構楽しいからです。

 

で、今は子供を妻の元へ送り、独り暮らしを謳歌しているわけなんですが、ふとCDを久々に借りようと思った先日、気づいたのです。

 

あ。CDも借りにいけない子育ては、余暇ではない。労働だったんだ。と。

 

仕事仲間は、「休みだから、家族とゆっくり過ごしなよ」と言います。こいつらは本当に、なーーーんにもわかっちゃいません。ゆっくり休んで子供との時間を楽しめるわけないだろ!!

妻は、「休みなのに、子供とずーっと遊んでくれていて、買い物や料理にも付き合ってくれて、休めなかったよね。おつかれさま。」と声をかけてくれます。さすが妻。子育ては体力、気力、そして時間を消耗することを、ちゃーんと把握しています。だから、ねぎらいの言葉が出てくるんですよね。妻には感心しました。

 

でも。おそらく世の中の子育てをがんばっている奥様方は、報われない思いをされているんじゃないか? と思いました。「主婦(主夫)は24時間労働で休みがない」という表現を見かけます。でもその表現は主婦(主夫)ではない方だって外で労働しているので、喧嘩になってしまうなあと思います。ここはひとつ、「週末は会社休んで子育て労働してくるわ!ダブルワーク!」という表現を、自分の周囲から布教していこうかな、と思ったのでした。

じゃ、これから子育て労働するから帰るね。